家相に関する考察
by
motom on
10月 21, 2014 •
9:30 AM
家相について、相談室の考え方を記載します。
家相では、「鬼門(北東)のトイレや風呂場はよくない」と言われます。これは当時の生活環境を考えれば、当然と言えるでしょう。
北東は「寒気や湿気」の影響の強い方位です。「昔の家づくり」から見れば、北東はトイレや風呂場には適さない場所であるのは確かと言えます。
昔のトイレはほとんどが「汲み取り式」で、換気扇もなく、不衛生でした。トイレが北東にあれば、冬は北風が吹いて寒く、しかも臭い匂いが家の中に入ってきます。(このため、昔は母屋と離れた場所、家の外にトイレを作ったほどです)。
また、北東に風呂やトイレがあれば、(衣服を脱いだりするので)、特に、寒い冬などは体に大きな負担となり、「脳卒中や心筋梗塞」で倒れるような事故も多く発生しました。
今日でも、入浴中の死亡事故は多く、年々増加傾向にあり、そのほとんどが冬場の心筋梗塞や脳卒中で、この数は交通事故で24時間内に亡くなる人の数よりも多いそうです。風呂場は、今も昔も鬼門です。
たとえ、トイレが「鬼門から外れていても」、寒い夜のトイレは、高血圧の人にとっては鬼門以上に「ダメージ」になったはずです。「鬼門(北東)にトイレがあると、家族に不幸が訪れる」などは、このように解釈するのが妥当でしょう。
西南の台所も凶です。冷蔵庫のない時代、西日が当たる台所は、夏は気温が高くなり、食べ物が腐りやすく、食中毒が頻繁に発生しました。これゆえ、西南の台所は凶でした。また、夏は南西から強く吹く風で「大火事」になることもありました。昔の「江戸の大火事」は、この南風にあおられて燃え広がったものでした。南西の台所が「凶」とされたのは、このような理由からです。
家相の凶ライン、正中線・四隅線
家相が成立した江戸時代末は、まだ人口も少なく、約3,000万人と言われました。しかし今は人口が増えて、当時とは事情が全く異なり、現在のように家々が”びっしり”並ぶ住宅事情では、「家造り」には多くの制約があります。
例えば、家相には「正中線(せいちゅうせん)、四隅線(しぐうせん)」というのがあります。「正中線」は東と西、北と南を結んだ「十字」のラインです。「四隅線」は北東と南西、北西と南東を結んだ「×字」のラインです。この線上にトイレの便器や風呂の浴槽、台所の流し台、コンロの火気、玄関のドアがあると「災難」が起こると言われています。この他には、「張り・欠け」等の問題があります。
このように、家相には「凶」とされるラインが無数に存在し、それを全部取り入れたら、家を建てるのが難しくなってしまいます。凶とならないように部屋を配置するには、かなり「入り組んだ間取り」になり、結果的に住みにくくなり、採光面でも不備が生ずるなど、何かと問題が発生するのが実情です。
また、これだけ凶のラインがあれば、ほとんどの家はどこかのラインにかかってしまうのが普通で、実際、完璧な「家相の住宅」というのは皆無に等しいです。今の日本の標準的な4LDKの家で、1階と2階の両方すべてが吉相というのは、ほぼ不可能に近い現状です。
このような事情を考慮すると、家相のすべての点をクリアーするのではなく、要所要所を押さえ、特に「鬼門の方位・欠け」に注意し、全体として七割OKであれば「良し」とするのが無難でしょう。
家相は「迷信」と「理にかなう部分」が混在し、単なる迷信なのか、根拠のある話なのか、その「見極め」が大切で、中身の「取捨選択」が大事です。他方、家相には「現代にも通用する理論」があるのも事実で、それを上手に取り入れていくことが、建物も日常の生活も、ご安心いただける住まいになると考えております。